- Column -

フルート・コミュニケーション[2]

ソロイスツの演奏会で配布するミニ新聞に掲載された気ままなコラムです

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Vol.7:練習か、食事会か。

Vol.8:フルートの息の音は耳ざわり?

Vol.9:ミニヨン・コンサートによせて/遠藤 尚子

Vol.10:春は辛いのです/志田 浩子

Vol.11:人間模様

Vol.12:現代音楽とは何か


フルート・コミュニケーションVol.7-199.1/24(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.7)

-練習か、食事会か。-

 演奏家は、楽器の技術があれば良いと言うわけでは無い。素晴らしい人間関係を構築出来なければならぬ。それは技術よりも先立つのだ。特に我々の様なアンサンブルともなれば、メンバー同士の人間関係は特に大事である。

 演奏会の日が近づくと、メンバーが家にやって来る。勿論、練習の為である。我々3人、家内も含めると4人になるわけだが、よくもまあ、話題が尽きるという事がない。決められた練習時間に2人がやって来る。さっそく"コーヒー会の無駄話"である。ハイドンはすごいなぁ、こんな題材であんな素晴らしい曲が出来てしまうなんて。もっとも、当時はコーヒーが貴重品だった様だが。とにかく、楽しいひとときを過ごす。よく私の事を"話し好き"と思われる方がいらっしゃるが、まったくそのとうりである。たっぷり30分、時には1時間近くたってようやく練習となる。

 練習する時刻は皆のスケジュールの都合上、昼時か夕刻になることが多い。そこで、皆で食事をとなる。このメンバーはとても気持ちが良い。まったくバクバクと喰いやがっ、いや、何を出しても最高の賛辞とともに気持ちよく食べてくれる。これは、サーブする方にとって最高のプレゼントなのだ。ホントの話。そこで友好をさらに深める事が出来るのである。

-女性はスゴイ。-

 我が家に来る方々、深入りした人程家内の株はうなぎ登りである。思うに、家内の株価はバブル絶頂期よろしく4万円に届く勢いである。私はと言うと、昨今の株価よろしく良くて2万円台、ちょっと余計な事を言うととたんに1万7千円台である。曰く「奥さんのお料理素晴らしいですネ、上坂さん幸せですね」「奥さん、ほんとによくできてる方ですね」「奥さんよく働きますね」である。なんとなく私は悪者扱いである。時折"カレシ"を連れてくるメンバーもいるのだが、これがまた女性の味方、白馬に乗った王子様なので、味方になって貰えない。寂しい。おい、I、明日は我が身だぞ。

 皆が帰った後、我が家内は「へへへ、今日もうまくいった、あなた、抵抗しようと思ってもムダよ、みんな私の味方なんだから。私の本性はバレッこないワ」。でも、私はそんな生活が気に入っている。なぜなら、みんな最高の仲間だからだ。 M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.8-1997.2/21(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.8)

-フルートの息の音は耳ざわり?-

 フルートを初めて間近で耳にしたとき、その音の大きさに驚いた経験がありませんか?私自身、初めて出した自分のフルートの音にびっくりしていたのに、初めて先生の音を間近で聞いたときは、その音の大きさにたいそう驚いたものです。そして、音に勝るとも劣らない息の雑音にも。我々管楽器奏者は、息を吸う事(ブレス)は音楽の一部としてとらえていますが、雑音はやはり雑音です。横笛300年の歴史の中でフルートは種々の飛躍的な改良を受けて来ましたが、息の雑音の改良は無理だったのでしょうか。否、改良する気が無かったのです。

 フルートが発展してきたヨーロッパでは石造りの建造物が中心です。つまり室内は残響が多く少々の雑音などフルートの響きとなってしまい、それを音楽に組み込もうとは考えませんでした。ですから、息の雑音は通常"雑音"として我々の耳には認識されてしまうのです。クラシック音楽を勉強していると、時折唐突なまでのアクセント奏法が要求されますが、残響の事を考えれば、むしろそれは当然の表現手段だと納得させられます。広い残響のある室内で文字どうり"音"を響かせる訳です。音が満ちている状態が長く続く訳で、"休符"があっても"間"の概念は希薄に感じられます。

 一方、日本の家屋や建造物といえば、木造で室内はすべて畳ですので、これは音をとても良く吸収してしまいます。ですから、尺八に代表されるように、息の雑音は雑音ではなく、立派な音楽の表現手段であり、楽器の音色の一部になっています。石造りの部屋と違い木造畳敷きの部屋では、残響は殆ど期待出来ません。つまり"音"が満ちている状態が少ない訳で、音のとぎれた所を"間"として、我々日本人は非常に高度な音楽的表現を継承してきたのです。

-息の雑音は本当に邪魔者?-

 息の音について悪い面ばかりかきましたが、本当はまんざら悪い事ばかりではありません。広く音響の良いホールでは、確かに音が美しく響きますが、聴衆は演奏会に"参加"する事は大変困難です。本来、音楽を楽しむ一番身近なケースは、サロンのような場所で、音楽を眼で感じ体で聴くといったもので、まさに本日の演奏会のスタイル同様です。狭く残響も少ない会場では、奏者の息遣いが直に感じられ、奏者と同じように呼吸をします。これはまさに"共演"といって良いのではないでしょうか。演奏者は、聴衆の息遣いを感じ取りながら演奏するものなのです。CDの音に慣れすぎた感のある現在、本物の音を生で聴き、感じとって頂きたいのです。 M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.9-1997.3/21(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.9)

 昨日ソロイスツの練習がありました。いつものメンバーIとSは、私のブランチを半分ほど横取りし、その上に、私が仕事をしながら食べようと思っていたおやつをあらかた食べてしまった。その光景に、遠藤さんは、ただ「はぁ・・」「ええぇ・・」と目を丸くしているのであった・・・。そんな遠藤さんに、今回はぜひ登場して頂ける様お願いしました。M.K.

-ミニヨン・コンサートによせて/遠藤 尚子-

 今日(3/19)のお昼頃、一本の電話を受け取ってしまったのが運命の始まり。それは上坂さんからだった。「いやぁー、ずっと言い忘れていたんだけど、ちょっとコラム書いてよ」「はぁ・・・」「明日までにね」「はぁ・・・」「何でもいいからさぁ」「はぁ・・・」「何よ、その"はぁ"と言うのは」「はぁ・・・」。

 国立音大管楽器科で先輩への"言い訳は口答え"という教育を受けて来た私には、とてもいやとは言いたくても言えない心境(心の訳者注:本当は先輩優しくていい人なんだ by.Naoko)。「僕もちょっと書くんだけどさぁ」「何についてですか」「まだ決めてないんだけど」。

 そっか、上坂さんも書くのか。ならば私も頑張ろうか。明日までとはちょっと酷だけど、白紙の状態から始めるのは同じだもの。そう思って電話を切ったものの文才のない私の事、なかなか筆が進む訳はない。実はもうすでに夜中の3時過ぎ。上坂さんはもう書き上げているのかしら(注:現在3/21,2:30a.m.)。つくづくすごいなぁと思う。

 今回、ゲストとして仲間に加えて頂いてからというもの、私は上坂さんの超人的なスケジュールに驚かされっぱなしなのだ。毎月のこのミニヨンでの企画、メンバーのスケジュール調整をしての練習、コンピュータを駆使してのチラシ作り、プログラム作りから宣伝まで、この新聞を作りそして本番。これだけでも私なら1ヶ月を費やすのに十分な仕事量なのに、上坂さんは更に沢山の生徒さんのレッスンをこなし、他にも数々の演奏会の企画・演奏を同時進行させ、そして家では桃ちゃん(注:娘、5才です)の優しいパパでもあったりする。すごいと言うより他の言葉を私は知らない。(注:ちょっと照れるなぁ)

 元来呑気さには定評のあった私が、時間の止まったようなウィーンで更に磨きをかけ帰国して1年と少し、上坂さんのようにバリバリと仕事をこなせるようになる日は、一体いつ来るのだろう。早く日本人らしく社会復帰していものだと切々と願う今日この頃。性格はとも角として、演奏までもあまり呑気になりすぎぬよう、今日は頑張ります。

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フルート・コミュニケーションVol.10-1997.4/11(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.10)

 悪性の風邪にダウン。おぉぉぉぉい、井上に志田ぁ、助けてくれぇ。 M.K.

-春は辛いのです/志田 浩子-

 今回は、K氏の風邪をきっかけに、どのような風邪の症状だとどれだけフルートに影響するかを考えてみようと思います。

 まずは、喉の痛み・頭痛・熱!
非常に集中力に欠けますが、我慢をすれば何とか吹くことが出来るでしょう。

 次に、腹痛!
お腹に力が入らないので、腹筋が使えず、弱々しく実に情けない音しか出ないでしょう。

 そして、咳!
これは困る!本当に困る!全然練習にならない。

 更に、鼻水!
もっと困る!やはりこうなったら吹かない方がいいかも?・・・・・。

 ということは、いつも普通にフルートを吹くことが出来るのは、実はとても健康だということなんですね!皆さん、風邪には気をつけましょう。えっ?花粉症の人はどうするのかって?実は私も悩める乙女。今の時期は辛いですね。今日もめげずに(めげてる?)ミニヨンに向かう志田でした。

チャン、チャン。

-B型人間/井上 紀子-

 世間は大きな誤解をしている。
 「B型」と聞くと「変な人」というイメージがあるらしいが、私はB型の代表としてこの誤解を解きたい。

 確かに、今までにも多くの雑誌などに取り上げられているように、「マイベ−ス」というのはあながち間違いではないが、それは、人を不快にさせるような「自分勝手」ということではない。B型は意外と人に気配りの出来る人間が多いのである。

 例えばうちのリ−ダ−(K氏:B型)は、毎月あるミニヨンでの打ち上げなどでは、素晴らしい気配りを披露してくれる。これには同じB型ながら頭が下がる。

 また、音楽家にB型が多いのも、B型のイメ−ジである「突拍子もない発想」=「変な人」ではなく、豊かな感受性の賜ではないだろうか。それが、音楽を奏でるにあたって、大きなプラスになっているのではないだろうか。

 しかし、これを書きながらも、こうも勝手な解釈ができる私は、つくづくB型なのだろうなあ。

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フルート・コミュニケーションVol.11-1997.5/23(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.11)

-人間模様-

 世の中には星の数ほどの合奏団がありますね。OO四重奏団、OOトリオ、OOゾリステン・・・等々。そう、皆さんよ〜くご存じのOOOO・OOOO・ソロイスツなんてのもありましたっけ。

 どの団体も結構長年にわたり精力的でファンタスティックな活動をしておられるのには敬服してしまいます。アマデウス弦楽四重奏団の様に、何十年も続いている団体もある。スゴイですね。でも、長年活動していて発足当時から全くメンバーの入れ替えが無い団体となるとそうは多くない。あっても、それを人々は"楽壇の奇跡"と賞賛する。何故か。

 考えてみれば当たり前の事、音楽家という"種族"は個性が特に強く主張も多い。長年の夫婦生活だって大変(だと思われる)なのに、3人4人と集まればなおさらである。それに年功という付加要素も加味されてくるので、問題はともすれば当人達でさえ理解出来ぬ程に複雑かつ神秘の域に達する。それは心霊世界での強烈なバトルと化する。

 そういえば、練習の時空耳とはとても思えない程の"声が"聞こえるものな。誰も何も言ってないって言うけど、クライスにも心霊の世界が出来てきたかな。2人とも"後輩"という立場で、言いたい事も言えず悶々としていて、それが念力となって私の心に響くのかも・・・否、そんな事は無い(ハズ)。

-大切なこと-

 普通の人は当たり前、音楽家なら絶対、それぞれの価値観を座右の銘よろしく哲学的に深くふかぁ〜く"信仰"なさっている(まぁこれがなくては"プロ"とは言えないんですけどね)。ですからその"価値観"はその人の中で"絶対"になっていたりして、衝突の原因になったりする。自分の気持ちを分かってもらおうなんて、あなた、ダメです、百年河清を待つなのであります。

 しかしアンサンブルの醍醐味は、それらの個性に対する主張に集約されているといって良いでしょう。音楽創りに血道をあげ、魑魅魍魎と化する寸前の精神の中、重要な事は、年齢、性別、国籍、文化を越えた尊敬信頼なのです。
(断っておきますが、宗教・ねずみ講等とは決して関係ありません)

 今宵演奏されるオネゲルが、サティ主宰の「青年協会」に参加している事について曰く「友情だけが、この個性ある芸術家達を結びつけているのだ」と。 M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.12-1997.6/20(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.12)

-現代音楽とは何か-

 本日の演目は現代音楽が中心です。本日の演奏曲目の中での最新作は1991年に作曲された「ドゥムカ」で、現代音楽ではポピュラーな奏法「四分音」が出てきます。四分音とはいわゆる半音のそのまた半音のこと。苦労して微妙な音程を作り出します。ほかに「フラッター」という奏法(巻き舌で吹く−RRRRRです)がポーボンの作品に出てきますが、これは四分音よりポピュラーな奏法です。

 そもそも「現代音楽」とは何でしょうか。「現代」とは勿論現在生きている我々からみた呼称ですね。ですから、ベートーヴェンもモーツァルトも「現代音楽」だったはずです。

 現代音楽−20世紀の音楽には大きな2つの流れがあります。1つは実験的要素が多いもの。もう1つは新しい手法を用いながらも古典時代に確立された手法をも重んじるというもの。前者は、前衛音楽なんて言われることもあり、おおむね難解です。後者は不思議な響きの中にも親しみやすい作品が多いようです。そして高度な作曲技術も要求されます。なぜならベートーヴェンが確立した手法を使って新しい事をしなければならないからです。ベートーヴェンを越える作品が少ないことがその証です。

 現代音楽、特に前衛音楽では、一般的に「美しくない」音を多用する事があります。楽器をたたく音、息の音、声、などです。ピアノのふたの中に上半身を入れて弦をたたく、なんて言うのもあり、見ていて何だか滑稽です(失礼!)。現代音楽では何でもありなのです。ジョン・ケージの様にピアノの前に決められた時間黙って座っている(つまり何もしない)だけ、と言うのもあれば、新しい演奏方法を発明して普通の音は1つもない、など演奏者泣かせの作品が少なくありません。

−モーツァルトもベートーヴェンも苦労した−

 ベートーヴェンもモーツァルトも「現代音楽」だったはずだ、と書きました。それだけではありません、バッハだってそうです。「バロック」とは「歪んだ真珠」ですものね。

 彼らは新作発表の場で、聴衆の冷笑、無理解に苦労しました。それでもめげずに作品を作り続けてくれたおかげで、我々は不朽の名作にふれることが出来るわけです。ですから現代音楽なんて初めてピカソの絵に接した時のように無理に理解しようとせず、ただ楽しんで(面白がって?)しまえばいいんです。「理解」なんて、後回しで良いのですから。
M.K.

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