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フルート・コミュニケーション[4]

ソロイスツの演奏会で配布するミニ新聞に掲載された気ままなコラムです

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Vol.19:恐ろしい人

Vol.20:アンサンブルとは

Vol.21:ユビラー

Vol.22:「先生は、もう緊張なんかしませんよねー?」

Vol.23:フルートの手入れって簡単じゃないのぉ?

Vol.24:うっとうしい季節です


フルート・コミュニケーションVol.19-1998.1/23(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.19)

−恐ろしい人−

 クライス・サロンコンサート「クライス・フルート・ソロイスツ演奏会」は、それこそ知る人ぞ知る、いや、きっとみんな知らない”名曲”が演奏されるのが 売 り である。このシリーズ演奏会に当初から賛同してくれていたO氏も呆れるほどの珍品揃いなのである。日本初演ではないか、という誉れ高き噂もささやかれている今日この頃である。

 本日のプログラム中前半の2曲は、初演ではないが滅多に演奏されない曲に数えられる。勿論、現代音楽のグループや、邦人作品を中心に活動する演奏家の間ではポピュラーな作品なのだが。今日この新聞を読んでいる皆さんは知らないのではないだろうか。日本人による西洋音楽理論を基にした曲で世界に認め始められた頃の秀作である・・・最近は、皆の知らない曲を演奏するのが快感に変わりつつある・・・ところが世の中広いもので、とんでもない曲を知っている人が居るものなのだ。

 いつの頃かこのサロンコンサートの常連に名を連ね始めたIさん、燃え上がるような情熱を秘めた恋心の持ち主にしてナイスミドル(ヨイショ!)。この人の守備範囲がとにかく広い。何でも聞く。バロックから現代、オーケストラから室内楽、声楽打楽器管楽器、何でもあり。どんなに有名人でも、その名前で聞かないのは立派。演奏家の名前を良く知っている。日本の若い女性の演奏家も特に良く知っている。

 新品・中古を問わずレコード店に入り浸っては持っていないレコードを発見、それが至福の時なのである。演奏家や曲目の有名無名は関係なく聞く。 我々の演奏会に来るようになったIさん、フルートのレコードを集め始めた。演奏会に来るごとに「これ知らないでしょ」と、私の知らない演奏家が演奏する知らない曲が録音されたテープを持ってくる。悔しいが「ははぁー、なるほど」と押し頂く次第である。よって、私の知らないフルート奏者も沢山知っている。だから、有名な曲をやろうものなら「あ、その曲ね、誰それの2回目の録音、いいね」とか「無名だけど***さん(女性、念のため)が歌心あってよかっな」とやられてしまう。

 多忙なためか、演奏会中「ぐぉー」と麗しい音楽を奏でることもある。なかなかの強者である。でもIさん、今日はしっかり聞いて下さいよ。前半の曲、きっと聞いたこと無いから。レコード探してもこの曲無いかもしれませんよ、へへへへーー。

インターネットへの後記:
 演奏会当日、Iさんニコニコしながら私のところへ。イヤーな予感、そして的中。今日のプログラムのテープを持参してきたのでした・・・・・負けるわ。

M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.20-1998.2/20(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.20)

−アンサンブルとは−

 クライス・サロンコンサートのシリーズは、合奏、すなわちアンサンブルを主とする演奏会ですね。演奏会に使用する楽譜、これは誰が見ても同じ意味に理解できるように書かれています。この楽譜こそがクラシック音楽繁栄の源なのですね。クラシック音楽は、主に口伝による雅楽とは雲泥の違いの広まり方です。

 それはさておき、同じ楽譜を使用すればアンサンブルにおいて誰がメンバーになってもちゃんとした演奏が出来るかという言えば−−否、です。1回だけの”お仕事”であれば、ある程度合奏の経験があり、真面目にやればプロとして恥ずかしくない演奏は可能です。また、お互いに尊敬の念を抱ける相手となら素晴らしい演奏も生まれるでしょう。しかし、活動を定期的に持続させるとなると状況が変わってきます。互いに尊敬し、尊重できるかがポイントです。要するに”気が合うか”ですね。

 ここに4拍のばす音があるとします。楽譜には4拍分の音符が書かれていますが、4拍数えるのは人間ですので機械のように何度でも同じく正確に数えるのは不可能です。それぞれ微妙に違う。そこで「息を合わせる」という、アンサンブルで基本的かつ一番大切な作業に取りかかるわけです。それでも機械のように完全ではない曖昧な部分が、”味”だったり”個性”として感じられるわけです。もちろん、それぞれの奏者の音色感や歌い回しなどにも個性があるわけですから、アンサンブルにおいて”楽譜を読む、指の練習”などは練習のうちに入らないのです。楽譜なんて、方位磁石程度、との認識です。

 そもそも、自分と同じ価値観・考え方の人なんて、似ている事はあっても完全な一致はあり得ません。育った環境や地域、性別や世代、そして音楽的環境も違ったメンバーが集まるのですから、そこには目に見えない、言葉にならない葛藤が存在します。そこをうまく融合させ、1つの素晴らしい音楽を構築する作業こそが醍醐味です。水と油、砂糖と塩、磁石のN極とS極が寄り集まり、変化・変身し、到達点は同じ場所なんて、ちょっとロマンティックだとは思いませんか?

 黄身とオイルとお酢、それに塩と胡椒、うまく調理しないと分離してしまうマヨネーズのようです。その場で作ったマヨネーズで食べる新鮮な野菜は、既製品には無いおいしさです。

M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.21-1998.3/27(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.21)

−ユビラー?−

 「上坂さんって、ホント”ユビラー”ですね」メンバーの志田さんは、時折こう私に言う。今回の、ドップラーの練習の時にも言われた。ま、確かにドップラーは難しいですけどね。ユビラーとは、「シャネラー」や「アムラー」と同様の造語である。つまり、ユビラーとは指が早く動く、テクニックがある、という意味である・・・だと思う。でもユビラーって言われるの何だかやだなー。指が早く動くだけの人、って感じするじゃない、ねぇ。でもね、志田さん、私のことをユビラーと言う無かれ、私などはごく普通です、世の中にはすごい人が居るモンなんです・・・・・。 

 3日前、そのすごい人と一緒でしたよ。その人、昨年秋にサントリーの大ホールでリサイタルをしました。それだけでも凄い事だと思うんですけど、東フィルバックに、尾高尚忠、イベール、ハチャトゥリアンのコンチェルトを一晩で吹いたんだから。アンコールにバッハのアリオーソと、サラ=サーテのカルメン・ファンタジー。こういう人をユビラーと言うんですよ、アンダスタン?え、誰だって?まぁ、MKさんとしておきましょう(私と同じイニシャルだが私ではない、念のため)。

 何故一緒だったかというと、友人知人がいる札響の東京公演があったんですが、ホルンの首席奏者がそのMKさんの同級生H。私の友人MはHさんと仲良しなのでみんなで打ち上げに行ったんですよ。あと、MKさんの奥様と元シティ・フィル ホルン奏者のIさんもいました。私と私の友人M以外はみんなT−H−学園の同級生、この人達がまた凄いんです。凄いって音楽の話じゃあありませんよ、うるさいんです。機関銃のようにしゃべりまくります。会場から打ち上げ場所へ向かうタクシーの車中でもこの5人、盛り上がっていたそうです。あんまりうるさいんで、運転手さんが早くおろしたくて、違反も省みずものすごいスピードでぶっ飛ばしてくれたそうですから・・・あ、乱暴なだけだったのか・・・私の友人Mだって負けていません。この中で私は一番静か、地味です。これが本来の姿なのでしょう。

 皆さんに共通なのは、音楽家していることです。え?当たり前だって?いやいや、ちょっと違います。四六時中音楽のことばかり考えていて、寄ると触ると音楽の話、こんなの音楽家じゃありません、学者先生です。仕事が終われば音楽の事など忘れて大いにしゃべり(含、エッチな話)飲み、食べ、時のたつのも忘れるのが音楽家なのです。アンダスタン?

M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.22-1998.4/10(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.22)

−「先生は、もう緊張なんかしませんよねー?」−

 何をおっしゃるうさぎさん、私だって人間、緊張する事ぐらいありますってば。

 実はこれ、今度の日曜日にとある教会のイースターの催しの一環で、モーツァルトのソナタを演奏することになった生徒のOさん(女性)のお言葉。昨日、最初で最後、たった1回のピアニストとの伴奏あわせのあと言われたのですが、約束の時間より 1時間 も早く現れた彼女、すでに緊張気味です。

 演奏する会場は、教会の礼拝堂。礼拝堂と聞いて侮る無かれ、中央に立派なパイプオルガンを配した、収容数百人の堂々たるホールで、演奏会も多々催されているんです。私も時折ここで演奏しますが、その様子をいくどとなく聴いている(見ている?)彼女、「1度でイイから私もここでフルート吹いてみたいわぁ」と、日々その想いが膨らんでいったのでした。ですから、今回のこの話を最初にした時は、間髪を入れず(0.01秒)出演を了承、意気揚々と練習に励んでいました。  師匠である私も、彼女の本当の性格を一瞬忘れ、そうそう、やりなさいやりなさい、貴重な経験です、とちょっと無責任に押し進めたのでした・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・そう、あれは冬にしてはうららかな日の射すある日の出来事、舞台に立ったOさんはヘンデルを演奏していました。と、突然演奏が止まり右手を挙げ「すみませーーん、もう一度やりまーーす」と、また最初から吹きはじめたのです。(カワイイ!何回間違えても許します:プロコフィエフをやるのは100万光年早い、と師匠に宣言されたO氏談)その悪夢が今頃おそってこようとは。責任感じるナー。

 でも大丈夫、クライスのみんなだってプロだって結構緊張するんだから。師匠より自分の音の方が綺麗だ、と、凄い事言うあの人だって心臓バクバクだよ。安心安心(何が?)。

−しますってば。−

 ようやく本題。

で、最初の言葉、 「何をおっしゃるうさぎさん、私だって人間、緊張する事ぐらいありますってば」 どんな時かって?それは、今日のように新しいメンバーと現代曲のような難しい曲にチャレンジするときです。

そうそう、皆様のような耳のこえた方々の前で演奏する時もです!
(↑これが言いたかった)

M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.23-1998.5/15(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.23)

−「フルートの手入れって簡単じゃないのぉ?」−

 ええ、日頃は簡単ですよ。吹いた後管内に溜まった水分を掃除棒に巻き付けたガーゼで拭き取り、外側を専用のクロスで乾拭きするだけ。あとはたまーに注油するだけでよい。簡単でしょ?ピアノみたいに、お金払ってわざわざ調律師さんに来て貰う必要もないし、オーボエみたいにリード削らなくてもいいし、金属で出来ているから乾燥した冬に管が割れないかと木管のように心配する必要もない・・・・・ただし、キーのバランスや穴(トーン・ホール)をふさぐタンポの調整がちゃんと出来ていればね・・・・・

 このキーバランスやタンポの調整がくせ者。フルートのメカニズムは、1つのキーを押すと連動して他のキーも動く仕組みになっている。バランスが悪いと、指で直接押したキーはちゃんとふさがっていても連動しているキーのふさがりが悪い。音が出ないほどひどければ分かりやすくてましなのだけれど、大変なのはバランスが狂っているけど音が出てしまう場合。え?じゃあ良いんじゃないの?と思ったあなた、甘い甘い。音が出るのと「響く」のとでは天と地の違い。ジャンボとセスナ。修理も音楽家と同じ芸術性とセンスですな。ヘタなリペアマンに出会うと、「これ、ちゃんと鳴りますよ、あなた調子が悪いんじゃないですか」と、この世の終わりのごとくサミシー答えが返ってきて(このタコ!おまえ耳あるのか!出ると響くとでは異次元のことなんだよ!)と、ニコニコしながら心の中で毒づいてしまう、つい。

 タンポも同様で、どうしても水分を含んだりして表面がでこぼこしてくる。当然ちゃんとふさがらなかったり、力を入れて押さえないと鳴らない。不必要な力みが入って指は回らず音の間違い多発で悲惨な本番となる。調整を頼むと、「ええ?おかしいですかね、これくらいしょーがないんですよねー」(こら!おまえ!それってただ怠慢なだけじゃねぇか!)

 大事な本場前に突然キーが動かなくなったりもする。慌てて修理に持ち込むと「オイルのさしすぎですね。ゴミが溜まってどろどろになっていました、ちゃんと掃除して下さいね」(俺はちゃんと掃除しているぜ、注油はアンタしかやってないんだよ!人のせいにすんな!)・・・・・・・・・・・・

・・・・・なんてコトにでもなったらさあ大変、笑い事じゃ済まなくなってしまう。フルートは細かい動きのある曲が多いので、メカニズムやタンポにかかる負担は大変なもの。キーの動く速度も早い。と、人間様と同じように楽器のご機嫌を伺いつつ、日々の本番に挑んでいるのです。

M.K.

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フルート・コミュニケーションVol.24-1998.6/19(Fri.)

(クライス・フルート・ソロイス Vol.24)

−うっとうしい季節です−

 前回に続き楽器のお話を。

 例年より早くつゆ入りしました。いやですね、嫌いです。ただでさえ暑がりの私は、この湿気の多さがたまりません。一般的に、弦楽器やピアノはこの湿気を苦手とします。「木」で出来ているので当然と言えば当然なのですが、フルートにとってもこの湿気は良いということはありません。

 フルートのキーには「タンポ」と呼ばれる部分があり湿気を嫌います。キーを押さえて穴をふさぐのがタンポなのですが、湿気を帯びると「にちゃぁぁぁ」としてキーの感触が悪くなり、ひどくなるとキーがくっついてしまったり、タンポが水分で膨らんでちゃんと塞がらなくなってしまいます。当然ちゃんと音が出ません。

 また、フルート内部はそもそも高温多湿なため水が溜まり易いのですが、湿度が高ければその傾向はさらに強まり、キーを開けているのにそこに水の膜が出来てしまい、これまた音が出なくなってしまいます。慌て、困ってしまいます。私の経験では1時間は持ちませんね。

 では、水が溜まりタンポが水分を含み不具合が生じたらどうするか・・・フルートの管内に溜まった水分を掃除棒に巻いたガーゼで拭き取るのは当然として・・・タンポの水分は「油取り紙」で除去します。そうです、女性の必需品のあれです。楽器店でも「クリーニングペーパー」と称して専用品を販売していますが、余計な添加物がついていたり割高であったりして関心しません。薬局へ行き、カウンターの(綺麗な)お姉さんに「えぇ?この人もビジュアル系??」などと思われるのも(←推測)かまわず「油取り紙下さい」と毅然として購入します。

−あれ?うまくなったみたい−

 楽器を趣味としている方で特に管楽器の方は、たまに音響の良いホールや残響の多い場所で演奏すると、音が気持ち良く響くので「上手になったみたいだ」と感じることがあるでしょう?これ、湿気にも言えそうです。日本では「???」のオーケストラも、欧州公演では「ブラボォォォォォ」となります。乾燥した空気で弦楽器が良く「鳴って」くるのですね。それだけではありません。音は空気の振動で伝わるわけですから、乾燥した場所での演奏では音自体もよく響いてくれます。我々管楽器奏者も、タンポの状態はいいわ、音は気持ち良く響くはで最高。誰かスイス(北海道でも可)にでも別荘を買いませんかね・・・

M.K.

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