クライス・フルート・ソロイスツ 演奏会後記7
Vol.48:クラシックとモダーン・2(2000.6/24)
Vol.49:クラシックとモダーン・3(2000.7/22)
Vol.50:ロマンティック狂想曲(2000.8/19)
Vol.51:デュオ・セレクション(2000.9/2)
Vol.52:トリオ・セレクション(2000.10/7)
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-ソロイスツ後記Vol.47-2000.5/20(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< クラシックとモダーン・1 > 出 演:Fl.上坂 学、Fl.宮武 花野子
−−−−−−−−− Tea Time −−−−−−−−−
アンコールは、ロンドンデリーの歌 でした.
ライツの作品は本来リコーダーのためのもので、1stはソプラノリコーダーが演奏するよう指定されています。ソプラノリコーダーは記譜上より1オクターブ高い音が出ますので、フルートでは全て1オクターブ上げて演奏しました。これが結構きつい(笑)。第3オクターブの細かい動きがたくさんあって、時々第4オクターブも出てきます。後になって、ピッコロで演奏したら面白かっただろうな、と思いました。曲は、古典舞曲の様式に挟まれ、ルンバ、ブルース、ブギ、などがあってとても楽しい作品です。ルンバやブルースなんて日頃演奏しませんから、最初の練習では格好が付かず笑ってしまいました。本番では気分が乗ってきたのでそれなりに表現できたと思っています。なりきることは大切ですねえ(笑)。
アルマの作品は、徹底的に不協和音が使われています。メロディ、と言うより、タイトルの通り2つの音の響きを遊んでしまった様な作品です。かろうじて拍子はありますが、調性はなく速度記号や感情記号も指定されていません。物理的な速度が示されているだけです(♪=84、という風に)。本番での音楽表現全般に言えることですが、本番での状況に応じて演奏が変わってくる。お客様の顔色をうかがい(笑)、気候やお腹の減り具合、体調などによって音楽に対する感情移入の度合いが変わってきます。当夜はライツ同様、割と興奮状態にありましたので、演奏しながら”これは面白い”などと自分の演奏自体にも感情移入してしまいました。
現代曲は、奏者自身も本番になってみなければどうなるか分からない、という気持ちが強いのですが、ロッシーニやローンベルグの様な古典的作品は演奏していて安心感があります。評判もこの古典的な2曲に集中するだろうと思っていましたが、予想に反して現代曲に人気が集中しました。ホントに面白かったそうですよ(自分で言うのも変ですが、、、)。現代曲に及び腰な皆さん、どんどん演奏してみてください。そして、たまには聴いてみるのも一興ではないでしょうか。
−−−こういう曲は奏者によって全く違う印象になるでしょう。いろいろ仕掛けを楽しめます・・・
−−−自由な解釈で聴けるところが現代音楽の楽しさでしょうか。古典は、身に付いた習慣のような安堵感がありますね・・・
−−−管楽器の中で、リコーダーはフルートともに人気がありますね。これからも色々演奏していきたいと思っています・・・
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-ソロイスツ後記Vol.48-2000.6/24(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< クラシックとモダーン・2 > 出 演:Fl.上坂 学、Fl.遠藤 尚子、Fl.宮武 花野子
−−−−−−−−− Tea Time −−−−−−−−−
アンコールは、ダマーズ「田園組曲」より ロンド でした.
今回はクラシックを代表してハイドンとカルの作品を取り上げました。ハイドンの作品は以前にも取り上げましたが、メンバーが違えばまた新しい発見があります。同じように演奏しているつもりでも、雰囲気が全然違います。面白いですねえ、メンバーの性格がはっきり出てしまいます。遠藤さん、宮武さんとの演奏は雰囲気がいい、ほのぼのしている(??)と好評です。
毎回、前半と後半それぞれ演奏前に大竹さんのお話があるのですが、大体いつも演奏者の誰かも出ていってお話しをします(バトル、とも言います・笑)。ほとんど打ち合わせもなく、出ていっていきなり予想外の質問をされるので演奏よりもドキドキします。今回も「ハイドン、カルともウィーンで活躍しましたが、ウィーンに留学なさっていた遠藤さん、留学中に何か面白いことがあったそうで、、、」と、知らないはずの、それも音楽に全然関係ない話を振られてしどろもどろ。これも楽しみの1つなのですね、この演奏会では。出演者は演奏していないときも安心できません(笑)。
ハイドンの作品の「音楽時計」とは、音楽を奏でるためにパイプオルガンのような仕掛けがあり、それを作動させるためにオルゴールのような仕掛けがついた時計(ややこしいです)、だったそうで、そのための作品はハイドン以外に大バッハの次男・エマヌエル、モーツァルト、ベートーヴェンなども作曲しています。その時計は高価な代物できっと貴族のみが持てたものでしょうから、当時の一流作曲家も作品を残しているのだと思われます。宮廷に仕えたハイドンとカルでしたが、ハイドンの契約書には「御前演奏の前には下着と靴下を新しいものに取り替え、髪を整えカツラには粉を振り、身綺麗にしていなくてはならない、オーケストラのメンバーにもそれを徹底させろ」と書いてあったそうですし、カルなどは税金の徴収までさせられたそうです。今も昔も音楽家は楽じゃない、という話が披露されました。。。
モダーンを代表してヴァイスとトマジの作品を取り上げました。それぞれ各楽章に表題がついていて演奏する方も聞き手もイメージが湧きやすい、と思うかも知れませんが、ヴァイスは良いとして、トマジの「ボリヴィア風」など、何がボリヴィアなのかを理解するのに一苦労でした(笑)。また、詳しい資料が無くヴァイスはどういう人なのかよく分かりませんが、「7つの戯れ」は教育目的を帯びた作品のようです。出版されている楽譜は、フルートのレベル別に出版されているフルートアンサンブル全集の1冊です。タイトル通りワルツっぽい曲、フーガっぽい曲などからなる楽しい組曲でした。技術的にもさほど難しくないので皆さんチャレンジなさっては如何でしょうか。
と、実は、、、、アンケート用紙の印刷を忘れてしまったのです。ナント、本番が終わるまで気が付きませんでした。いつもプログラムに織り込んでいるスタッフも気づかないと言う有様。スミマセン、次回は忘れないようにします。。。。。
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-ソロイスツ後記Vol.49-2000.7/22(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< クラシックとモダーン・3 > 出 演:Fl.上坂 学、Pf.近藤 盟子
−−−−−−−−− Tea Time −−−−−−−−−
アンコールは、「海」(隠しテーマ:富士山、近藤盟子 編曲) でした.
クラシックとモダーン最終回の当夜は、フルート曲の少ないベートーヴェンの登場です。「セレナーデ」のオリジナル編成はフルート、ヴァイオリン、ヴィオラの三重奏なのですが、ピアノ伴奏版は後年第3者がフルートとピアノ用に編曲したものです。編曲に際して、ベートーヴェンは編曲の許可を与えただけであるとか、最終的な校訂だけはした、などの説があります。今までピアノ版は「クラインホルツ」という人の編曲が定番でしたが、当夜は新しい編曲で演奏いたしました。
セレナーデの作曲された背景は、貴族から依頼されBGMなどのためのものなのだそうです。つまり、芸術的な創作活動と言うよりは生活のため、だったということです。普通ならヴィオラの代わりにチェロを持ってくればもっとバランスが良さそうなものですが、ベートーベンのインスピレーションか、また自らがヴィオラ弾きとして活躍していたからか、珍しい編成の曲が残されました。当時ベートーヴェンの周りに適当な奏者がいなかったのかもしれません。そのせいか、とても軽妙な楽しい曲に仕上がっていると思います。
ベートーヴェンは生存した兄弟の中では長男でした。次男はどうも堕落した人生を送ったらしい。長男が偉い、という兄弟です。私は長男、解説の大竹さんは次男。いつもバッハの息子達の話で、長男のフリーデマンは放蕩息子、次男のエマヌエルは家族みんなの面倒を見た出来の良い息子、とやられてばかりいましたので、当夜は幾分溜飲が下がりました(笑)。
余談ですが、ベートーヴェンの父親がベートーヴェンをモーツァルトのようにしようとスパルタ教育をし、ベートーヴェンを難聴にした、という話は少々大袈裟だという説もあるんですね。親父は単にアル中なだけだったとか。その代わり祖父は大変厳しい人だったようです。
さて、ゴーベールといえばフルートを吹いている人にはすぐに「タッファネル=ゴーベール」を思い出すことでしょう。そのゴーベールです。ゴーベールのメソードは、モイーズやジョネを経由して世界中のフルート吹きへ多大なる影響を与えています。私も師匠の師匠の、、、と辿っていけばゴーベールにたどり着きます。曲はベートーヴェンと全く性格が異なり、流麗で洒落ています。曲の構造もかなり自由ですからベートーヴェンからいきなりゴーベールを吹くと戸惑うくらいです。しかし、その美しさは人の感性に直接訴えるものがあると思います。
−−−ありがとうございます。性格の異なる2曲を素直に楽しんで頂けてなによりでした・・・
−−−そうなんですよ、脇役に徹しながらもどう主張するかが重要なんです・・・
−−−ありがとうございます。プログラミングを失敗すると、演奏者の実力が発揮できませんね・・・
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-ソロイスツ後記Vol.50-2000.8/19(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< ロマンティック狂想曲 > 出 演:Fl.上坂 学、Pf.近藤 盟子
−−−−−−−−− Tea Time −−−−−−−−−
アンコールは、「赤とんぼ」(隠しテーマ:虫のこえ、近藤盟子 編曲) でした.
前半のフルートで演奏する曲目、ガンヌ、カプレ、ゴーベールには共通項があります。3人ともほぼ同時代に生き、パリ音楽院に学び、カプレとゴーベールはローマ大賞を受賞し指揮者としても活躍しました。主要作品にはオペラとバレーが含まれていることは、バレー黄金時代を生きた証でもあります。
ガンヌはパリ音楽院でデュポア、フランクに学び、劇場の作曲家としてオペラ、バレー、歌曲などを残しています。アンダンテとスケルツォは、当夜演奏したゴーベールの師匠格、ポール・タッファネルに捧げられています。民謡調のアンダンテに続き、明るいスケルツォが楽しい作品です。
カプレは、パリ音楽院に学びローマ大賞を受賞しました。ローマ大賞とは一種のコンクールで、受賞者にはイタリアへ留学することが出来ます。指揮者としても活躍し、親交のあるドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」を初演しています。彼のピアノ曲を管弦楽などにアレンジしていることからも親密さが伺えます。カプレの作品のなかで中心をなすのは、ミサやオラトリオなどの宗教曲です。フランス宗教音楽の大家・フランク(ヴァイオリン・ソナタが有名ですね)の後継者として位置づけられています。
ゴーベールは、パリ音楽院に学んだフルート奏者、作曲家、指揮者です。ローマ大賞を受賞し、パリ音楽院のフルート科及び作曲家の教授、パリ音楽院管弦楽団及びパリ・オペラ座の指揮者を歴任したパリ音楽会の中枢にいた人です。フルート曲以外に、バレエ、オペラ、室内楽歌曲などたくさんの作品を残していますが、我々笛吹きにとって、俗にタッファネル=ゴーベール呼ばれる「17の大日課練習」が有名です。
前半最後にピアノの独奏で、メトネルの作品をお届けいたしました。作曲家としてだけではなく、ピアノ奏者としても活躍しました。あのラフマニノフの先生としても有名です。ピアノ奏者として頭角を現した彼は、後に母校のモスクワ音楽院の教授も務めています。作品はピアノ曲が大きな比重を占めています。
最後に演奏したリーツは、本日純粋のロマン派作曲家、チェロ奏者、指揮者です。父はヴィオラ奏者、兄はメンデルスゾーンと親交の深かったヴァイオリン奏者で、最初にチェロを勉強したのは自然な成り行きだったのかも知れません。そのチェロは当時名チェリストとして名を馳せていたローンベルグに習っています。余談ですが、ローンベルグは大変な自信家で、ベートーヴェンに捧げられたチェロの作品を「あなたの作品は二流だから私が演奏するに値しない」と突き返したそうです。
劇場のオーケストラのチェリストとして音楽家の道を歩み始めたリーツは、後にメンデルスゾーンの代理で指揮社を努め、翌年には正指揮者として活躍しました。ライプツィヒでも指揮者として活躍しています。作曲家として、オペラや交響曲を含む管弦楽曲などを残していますが、バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェンなどの作品の出版に携わった功績も大きいようです。
−−−ありがとうございます。あまり知られていない曲でも良い曲が沢山ありますのでこれからもどんどん紹介していきたいと思っています・・・
−−−11月に演奏する曲の中に、バスフルートで演奏する曲がありますのでお楽しみに!!・・・
−−−ありがとうございます。暖かいお言葉に活力がみなぎります。知られていない作品は、まだまだあるんですよ・・・
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▲ シリーズの全プログラム コラムVol.50 ソロイスツ ホーム |
-ソロイスツ後記Vol.51-2000.9/2(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< デュオ・セレクション > 出 演:Fl.上坂 学、Fl.常木 香苗
1.SONATA:Allegro 2/4
−−−−−−−−− Tea Time −−−−−−−−−
アンコールは、ヴェルディ「乾杯の歌」 でした.
ボザは、パリ音楽院に学んだフランスの作曲家・指揮者です。29歳の時にローマ大賞を受賞したという比較的大器晩成型の音楽家(ビゼーは19歳でローマ大賞を受賞)です。一時指揮者としても活躍しましたが、45歳でパリ・エコールノルマルの学長に就任しました。教育者としてもその才能を発揮し、教育目的からも多くの作品が生まれたようです。現在では、コンクールの課題曲に選定されるほど高度で素晴らしい作品を作曲しています。
ヒナステラはブエノスアイレス生まれのアルゼンチンの作曲家です。この二重奏は彼の代表作の一つですが、他にハープ協奏曲やピアノの作品がしばしば演奏されます。第2次世界大戦終戦の年に書かれたこの作品は、ヒナステラがアメリカへ留学する頃に書かれた物で、西洋の音楽理論に則っていながらも、何処か民族的な不思議な響きのするとても素敵な作品です。オーボエのパートをフルートで演奏するには多少工夫が必要ですが、十分に曲の良さを伝えることが出来ますので是非フルートの曲としてレパートリーに加えておきたい曲になっています。
モーツァルトのこの作品はとても美しく素晴らしい曲で、このような作品が沢山あるヴァイオリンやピアノが羨ましくて仕方ありません。なぜフルートのための作品をもっと残してくれなかったのでしょう、残念ですねえ。モーツァルトはフルートが大嫌い、ということになっていますが、本当のところは身近に優秀な奏者か居なく、作曲意欲が湧かなかった、というのが本当のところかも知れません。だって、残されているフルートのための作品はどれも素晴らしく、とてもフルートが嫌いだったとは思えないのです。。。
−−−やはり有名な曲は無条件で楽しめますね・・・
−−−食べ物を口にすると和みますね、ワインは美味しかったですか?・・・
−−−単旋律でもヒナステラ独特の世界が広がるのはすごいですね、ヒナステラを気に入っていただけて私も嬉しいです・・・
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-ソロイスツ後記Vol.52-2000.10/7(Sat.)
( シリーズの全プログラム )
< トリオ・セレクション > 出 演:Fl.上坂 学、Fl.遠藤 尚子、Fl.常木 香苗
アンコールは、モーツァルト:メヌエット(交響曲第40番より)でした.
フルートの二重奏や三重奏、そして四重奏は普通のクラシック愛好家が考えるよりはるかに多くの作品があります。しかし、そのほとんどは埋もれた状態でとても残念に思っています。ミニヨンでのコンサートシリーズは、これら埋もれた素晴らしい作品に光を当ててあげようと言う趣旨なのですが、その中でも特に人気のある4作品を演奏いたしました。
クーラウは、フルートアンサンブルの定番中の定番ですが、長大かつ壮大な作品が多く手軽に楽しめるというわけではありません。何しろ、二重奏で20分を越える作品がいくつもあるのですから。。。その中でも今回演奏した作品13の3つの作品は比較的短く、演奏も鑑賞も手軽に楽しめる作品です。
アルビージはミラノ・スカラ座の首席フルート奏者だった人で、テクニカルで色彩豊かな作品からは相当の名手だったことが伺えます。一般的に「小組曲」と訳されるこの曲の原題は「Miniature Suite」で、Miniature には「精密画」、「飾り文字」などが第一義にあります。タイトルから察せられるように、印象派の標題音楽よろしく風景画を音楽で表現していると思われます。
チェレプニンは日本へも来たことのある現代の作曲家で、全体に東洋風のモチーフで統一されており、特に幻想曲は武田の子守歌、舞曲は盆踊りでよく使われる東京音頭を連想させます。軽快で楽しくテクニックを披露する場面もあり、アルビージの作品と共に、学生のコンサートやアンサンブルコンテストのような場でも大変人気があります。
ドヴィエンヌはプログラム中一番古く古典時代の作品で、それだけに安心感のある(馴染みのある?)音楽を提供しています。自身もフルートの名手だけあってテクニックを披露する場面が多くありますが、決して無理をせず、難しい割に吹きやすい作品です。そのことが、鑑賞を容易にしているのでしょう。フルートの良さが良く出ています。
−−−ヨーロッパの楽壇でも「東洋」が流行したこともあったのです。違う文化から見た東洋も興味深いですね・・・
−−−演奏から風景を想い出していただくとは嬉しいです。アルビージも喜んでいるでしょうね・・・
−−−どんどんチャレンジしてくださいね!!・・・
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